解説:H.sin氏(機械部門)
令和4年
Ⅲ-35
圧力勾配のない空気の一様流中で,流れに平行に置かれた半無限平板上に発達する境界層に関する次の記述のうち,不適切なものはどれか。
①境界層の特性を表現するために,粘性作用による流量の欠損を表す排除厚さや運動量の欠損を表す運動量厚さが用いられる。
②平板の前縁から発達する層流境界層では,その厚さδが近似的にδ≈5.0√vx/U と表される。ただし,xは平板先端からの距離であり,空気はxの正方向に流れている。また,流れ方向速度をU,動粘性係数をvとする。
③層流境界層は,平板に沿った流れ方向に次第に厚くなり,臨海レイノルズ数を超えると,乱流境界層となる。
④乱流境界層内には壁面の影響が著しい壁領域(内層)があり,内層はさらに3つの領域から成り,壁面側から粘性底層,緩和層(バッファー層),対数層(対数領域)と呼ばれる。
⑤境界層の厚さは,速度が一様流の90%に達する位置で定義される。
解説
[解くために必要な知識]
物体の周りを粘性のある流体が流れると,粘性の働きによって物体表面付近に速度の遅い領域ができる。これを境界層という。境界層は壁面から速度が主流速度の99%に達するまでの領域を表す。
ただし、乱流の場合は主流速度の99%で定義できないことがある。この場合、境界層により排除された流体の体積、運動量、運動エネルギーの総量を主流での厚さに換算した境界層厚さと定義される。
境界層の中の流れにも,層流と乱流がある。
層流ではδ=4.91√vx/U で厚さを算出できる。
乱流領域には壁の影響を受ける内層とそれ以外の部分を外層という。内層には粘性底層、遷移層(バッファー層)、乱流層(対数層)の3領域からなる。
では問題を解いてみましょう。
境界層の厚さは速度が一様流の99%で定義されます。
よって⑤が回答となります。
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