· 

技術士一次試験 専門科目 機械部門 R4 Ⅲ-29

解説:H.sin氏(機械部門)

令和4年

Ⅲ-29

沸騰伝熱に関する次の(ア)~(オ)の記述のうち,不適切な記述の組合せはどれか。

 

(ア)沸騰現象は過熱度を減少させると,膜沸騰から遷移沸騰を経て核沸騰に至る。

(イ)伝熱面上で発生した気泡は,離脱した後に消滅することがある。

(ウ)膜沸騰の過熱度は,核沸騰の過熱度と比べて小さい。

(エ)突沸現象は,伝熱面から気泡が発生する不均質核生成によるものである。

(オ)沸騰伝熱に対し,重力加速度は影響する

 

①(ア)と(イ)

②(イ)と(ウ)

③(ウ)と(エ)

④(エ)と(オ)

⑤(ウ)と(オ)

 

解説

[解くために必要な知識]

 液体の沸騰現象の形態を熱流束と過熱度との関係で表した基本的な曲線を沸騰曲線という。

  液体が単位時間あたりに伝えられる熱の量を熱流束(縦軸)、伝熱面の温度と液体の飽和温度との差を過熱度(横軸)とする。

 

飽和曲線は以下の領域に大別できる

・非沸騰領域(図A→B)

 加熱初期

・核沸騰領域(図B→D)

 液体の温度が上昇して部分的に沸点に到達すると沸騰がはじまる。この状態を核沸騰と呼ぶ。

・遷移沸騰領域(図D→E)

 発泡核の数が増えて蒸気の発泡周期も短くなり、伝熱面を覆う点状の沸騰が激しくなる。部分的に上記の膜となって繋がった形態を表す。この状態を遷移沸騰領域と呼ぶ。

・膜沸騰領域(図E以降)

 伝導面の全面を沸騰した上記が膜となって覆い、やがてその蒸気膜と液体の接触面から直接沸騰を始める。この状態を膜沸騰と呼ぶ。

 

B:飽和開始点

C:核沸騰限界点

D:極大熱流束点

E:極小熱流束点

 

では問題を解いていきます。

(ア)過熱度を現象させると膜沸騰→遷移沸騰→核沸騰となるので正しい

(イ)伝熱面上で発生した気泡は離脱後に消滅することがあるため正しい

(ウ)核沸騰と膜沸騰では膜沸騰の方が過熱度が大きいため誤り

(エ)突沸現象は沸点以上になっていても沸騰せずに過熱状態となっているときに、外部からの衝撃等で急に沸騰することであるため、記述は誤り

(オ)重力加速度が小さい場合、沸騰時に発生する気泡が伝熱面から離れづらくなる。そのため、重力加速度は沸騰伝熱に影響するため正しい

 

よって③が回答となります。