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技術士一次試験 専門科目 機械部門 R4 Ⅲ-20

解説:H.sin氏(機械部門)

令和4年

Ⅲ-20

下図のように,上端点Oをピン支持された質量Mの細長い棒がある。棒の重心GはOから距離hの位置にある。いま,棒が真下にぶら下がっている状態で,Oから下方向に距離rだけ離れた地点で右向きに衝撃力Pを作用させると,点Oに水平方向に抗力Fが作用するが,ある距離r=rpのとき,Pの値にかかわらずF=0となる。その距離rpとして,適切なものはどれか。ただし,棒の重心回りの慣性モーメントをJとする。

①J/Mh

②Mh/J

③(J+Mh2)/Mh

④J/Mh + h

⑤そのような距離rpは存在しない

 

解説

[解くために必要な知識]

 回転運動における原点回りの角運動量は

L=Iω

L:角運動量

I:慣性モーメント

ω:角速度

 

 位置 r において、運動量 p を持つ質点の原点まわりの角運動量 L は

L=r×p

r:半径

p:運動量

 

 質点が質量 m、速度 v のとき、運動量は p = mv であり、角運動量は

L=r×mv で表すことができる。

 

また、慣性モーメントの基準点を変える式は

I=Ic+h2m

で表すことができます。

 

では問題を解いていきます。

 

衝撃荷重を加えたときの棒の運動量をFとすると

F=rp で運動量を表すことができる。

また、O点回りの回転運動を考える(IはO点回りの慣性モーメントとする)

L=Iω

運動量がつりあうため

F=Lより Iω=rp

 

衝撃が全て回転運動に変換されるため棒の初速度vはhωと等しいとき

v=hω → ω=v/h

p=Mv

運動量のつり合い式に代入すると

Iv/h=rMv となりrについて整理すると

r=I/Mh

となります。

(当初、正解と案内があった値が出ました)

 

 ここで注意が必要なことはIはO点回りの慣性モーメントであり、問題文に与えられている慣性モーメントJは重心基準であることです。

重心基準の慣性モーメントをO点回りに変換する式より

I=J+Mh2

r=(J+Mh2)/Mh=J/Mh+h

 

以上より回答は③か④となります。