令和3年
Ⅲ-18
質量mの薄い板をばね定数kのばねで吊るして空気中で振動させたとき周期はTであった。図のようにこの板全体を液体中に浸して振動させると、液体の抵抗により減衰し、周期はTのn(>1)倍となった。板に作用する抵抗力が板と液体の接触面積Sと速度に比例するとき、その比例係数として、適切なものはどれか。
解答
③
[解くために必要な知識]
質量mとばねkおよび粘性cを持つ系の直線運動方程式は次の通りです。
md2x/dt2+cdx/dt+kx=0
固有角振動数 ωn=√(k/m)
臨界減衰係数 ccr=2√(mk)
減衰比 ζ=c/ccr=c/2√(mk)
固有角振動数 ωnc=√(1-ζ2)ωn
固有周期 τ=2π/ωnc
固有振動数 f=1/τ
粘性係数cが臨界減衰係数ccrよりも大きなとき、自由振動は起きません(過減衰振動)。逆に小さいときは自由振動が起きます(不足減衰振動)。
*粘性を持つ系の基本式です。これらは覚えておきましょう。
では問題を解いていきます。
求める比例係数をAとします。板に作用する抵抗力が板と液体の接触面積Sと速度に比例するとありますから、この系は速度に比例する抵抗力=粘性を有する系であり、板に作用する抵抗力は AS dx/dt となります。
質量mとばねkおよび粘性cを持つ系の直線運動方程式は次の通りでした。
md2x/dt2+cdx/dt+kx=0
液体に浸す前のこの系の周期Tは粘性を持たないため、
T=2π/ωn
液体に浸したときの周期をTnとすると、問題からTのn倍になるので
Tn=n・2π/ωn (1)
一方で、粘性をもつ系の周期と固有角振動数は
Tn=2π/ωnc
ωnc=√(1-ζ2)ωn
となるため、
Tn=2π/[√(1-ζ2)ωn] (2)
(1)、(2)式から、
n・2π/ωn=2π/[√(1-ζ2)ωn]
n=1/√(1-ζ2)
1-ζ2=1/n2
ここで、ζ=c/2√(mk)を代入します。
1-c2/4mk=1/n2
c2/4mk=1-1/n2
c2=4mk(n2-1)/n2
c=2√[mk(n2-1))/n
題意から粘性係数cは比例係数Aと接触面積に比例します。c=AS よって
AS=2√[mk(n2-1))/n
A=2√[mk(n2-1))/nS //
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