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前回の最後に「リミットスイッチがオフのときにシリンダーへの空圧がすべて排気されてフリーになる」というエア回路を紹介しました。
今回は次の2点を見ていきたいと思います。
1.リミットスイッチがオフの時にはシリンダーを原点復帰させる。
2.リミットスイッチがオフの時にはシリンダーをその場で停止させる。
1.リミットスイッチがオフの時にはシリンダーを原点復帰させる。
まずはおさらいです。
前回で確認したように、押しボタン(信号番号X1)を押している間はシリンダーが押し出し動作をするが、ボタンから手を離すとストロークの途中でも原点に復帰するような動きを実現するための回路は図1の通りです。
押しボタンを押してX1信号が入力されると、コイルが励磁されて電磁弁は左の状態に移りシリンダーは押し出し動作をします。
押しボタンから手を離すとコイルの励磁が切れてばね力により電磁弁は右側の状態に移ります。するとシリンダーは引き込み動作をします。この場合は引き込まれた状態を原点としています。
装置を筐体で覆い、扉にリミットスイッチを付けます。このときリミットスイッチがオフ、つまり扉が開いているときは常に原点に戻るような回路を追加します。
誤った回路の例から見ていきます。
誤った回路例
図1で見た回路の1番(P)ポートに圧縮空気を供給するわけですが、ここに図2に示すようにリミットスイッチの信号(X2)を受けて動作するシングルソレノイド電磁弁(SV2)を追加します。これは前回確認したインターロックの取り方と全く同じやり方になります。
これにより、リミットスイッチが切れているときはSV2が右側の状態になり、シリンダーを動作させるための電磁弁(SV1)への圧縮空気供給が絶たれます。圧縮空気が送られてこないため、いくらSV1を切り替えてもシリンダーは動きません。
しかしこの回路では、「リミットスイッチがオフの時に原点復帰させる」という動きは実現できません。リミットスイッチが切れているときは圧縮空気が絶たれるわけですから、エアシリンダーの2つのポートは大気開放されてしまいます。つまりシリンダーは原点に戻ることなくフリーの状態になってしまいます。
これでは目的を達成できません。
正しい回路
図3に示すようにシリンダーを動作させるための電磁弁の動作入力信号X1にandでリミットスイッチ信号X2を追加します。これによりX2が切れているときはX1をいくらオン/オフを切り替えても電磁弁に入力信号が入ることはありません。
電磁弁に入力信号が無ければばね力が働き、右の状態を保持します。つまり原点復帰を行うことができます。
この例は電気信号をandにするというものであり、電気回路での対処ですが、SV1に外部パイロット式を使う事で空圧機器側での対処も可能です。
次の事例、「リミットスイッチがオフの時にはシリンダーをその場で停止させる」で見ていきたいと思います。
2.リミットスイッチがオフの時にはシリンダーをその場で停止させる。
まずは前回のおさらいです。
押しボタン(信号番号X1)を押している間はシリンダーが押し出し動作をするが、ボタンから手を離すとその場で一時停止を実現するための回路は図4の通りです。
ここで、リミットスイッチを使ってインターロックを取る回路を見ていきたいと思います。
結論としては図5の通りです。
まず、シリンダーを動作させるための電磁弁としてSV1があります。
このSV1は外部パイロット式です。つまり電気信号を直接受けて動作するものではなく、電気信号を受けた電磁弁から供給される圧縮空気で動作する弁です。ここを分けて表記します。電気信号を直接受ける電磁弁をSV2-1、SV2-2とします。それぞれシングルソレノイドタイプで入力信号X1、X2で動作が切り替わります。
ここに供給される圧縮空気ラインにシングルソレノイドタイプの電磁弁SV3を入れます。SV3はリミットスイッチからの信号X3を受けて動作します。X3が切れているとき(扉が開いているとき)は励磁が切れてばねが働きます。つまりSV2への圧縮空気の供給が絶たれます。このときX1やX2の信号をいくら切り替えたところで、SV1には圧縮空気が送られません。つまりSV1が真ん中の状態になり、シリンダーのポートは大気開放ではなく蓋が閉じた状態になります。このとき、シリンダー内部の空気は外部に抜けることができずに保持されます。よってシリンダーはその位置で停止します。
*ただし、長期間この状態にあると徐々に空気がぬけていくので注意が必要です。
このシリーズで紹介している回路の例はあくまで一例です。どのようなシチュエーションにおいてもこのやり方が絶対に正しいというものではありません。
設計の参考までにしていただければと思います。
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次のブログは3Dプリンターを使ったものづくりに挑戦!!です。
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