今回は令和一年、材料力学からの問題です。
技術士一次試験の機械部門過去問の中でも直近3年間、2017年から2019年の中で、え?これ難しくね?って思った問題をピックアップして解説します。2019年は再試験があるので4回分の過去問からのピックアップです。
解説して欲しい問題があったらご連絡ください。
それでは問題です。
Ⅲ-3 図に示すように、円柱(長さL、断面積A1、縦弾性係数E1、線膨張係数α1)と円筒(長さL、断面積A2、縦弾性係数E2、線膨張係数α2)を同軸で組合わせて、両端を剛体板で接合している。円柱と円筒の両方に応力が生じていない状態から、温度がΔTだけ上昇したとき、円柱と円筒の伸び量ΔLとして、最も適切なものはどれか。
ただしα1≦α2とし、円柱と円筒の半径方向の変形は無視できるものとする。
コメント
今回の問題はパターンを知っていれば解けます。が、計算が割と複雑です。時間を気にしてしまうとうっかり計算ミスをしてしまうので要注意です。ちなみに一次試験の専門科目は2時間で25問の解答ですから1問当たりかけられる時間は4分程度です。
では解答見ていきます。
解答のポイント
熱膨張の基本式は線膨張係数(熱膨張係数)αを使った(1)式です。
また、ひずみεと伸びΔLの関係は元の長さLを使った(2)式、応力σは力Pと断面積Aあるいは縦弾性係数Eとひずみεから(3)式です。
この3式は基本中の基本ですので覚えてください。
α1<α2から、熱による伸びは円柱α1よりも円筒α2の方が大きくなります。よってΔTの上昇後には図1に示すようにΔLの伸びが発生し、円柱には引張り(円筒の伸びに引っ張られる)力がかかります円筒には逆に圧縮力がかかります。
つまり円筒には熱によるひずみに加えて引張りによるひずみが発生します。
一方で円柱には熱によるひずみに加えて圧縮によるひずみが発生します。
この両者が同じになります。(剛体で接合されているため伸び量が同じになる。)
円柱から見ていきます。
円柱の熱によるひずみε1hと引張りによるひずみε1p、両者を加えたものε1は次の通り。
円筒は次の通りです。
上記(4)式と(5)式がイコールになります。
ここで(2)式より次の関係が成り立ちます。
ε1=ε2=ε であるのでε1の(4)式を代入して、さらに(6)式を代入します。
よって解答は④になります。
おわりに
円筒と円柱の伸びが同じであることからそれぞれに引張力と圧縮力が発生している。それぞれの関係性からひずみの式を求めて、(伸びが同じであるため)ひずみが同じというところから結論を導いていきます。
プロセスを知っていれば確実に正解できますしそのプロセスも難しいものではありません。とにかく計算が厄介です。添え字を一つ間違えると全く違う答えになります。冷静に解けば添え字を間違うなんてことはありません。冷静に取り組みましょう。
前のブログは熱の難問(実は難問ではなかった)です。
次のブログは令和2 の制御の問題解説です。
コメントをお書きください