◆概要
はめあい公差はアルファベットと数字で公差を指示します。図1に示すようにアルファベットは基準線に対し+側あるいは-側に最小で①何μmずれるのか?を指示します。
アルファベットに続く数字はIT基本公差といい、公差の幅が②何μmあるのか?を指示します。
穴側のアルファベットは大文字で、軸側のアルファベットは小文字で表します。
①②の具体的な数字として私がよく使うものを中心にまとめた、穴で用いるはめあい公差とその公差が表1です。軸の場合は大文字を小文字に置き換えて読んでください。より詳しくはJIS B 0401を参照してください。表はあくまで誤記の可能性がある参考です。正確な数値は必ずJISを確認してください。
◆公差域の指示、穴と軸
図2に示すように、穴の公差をA~Hまでで指示した場合、基準線に対しプラス側の穴が仕上がります。(大きな穴)例えばΦ24G7を指示した場合、+7~+28μmになります。
K~ZCを指定した場合は基準線に対しマイナス側の穴が仕上がります。(細い穴)例えばΦ24P7を指定した場合、-14~-35μmになります。
アルファベットによって基準線から最小で何μmズレるのか?(Gの場合は+7、Pの場合は-14)①が決まり、数字によって公差の幅(7の場合は21μm)②が決まります。
同じG7でも、Φ70G7の場合は+10~+40となります。同じ公差指示でも基準値が変わると公差の最小値とその幅が変わります。
軸側の場合は図3に示すように穴側と逆になります。すなわちa~hで指示した場合、基準線に対しマイナス側の軸が仕上がります。(細い軸)
k~zcを指定した場合は基準線に対しプラス側の軸が仕上がります。(太い軸)
◆はめあい公差の組合せ
穴もしくは軸のどちらかを基準にして組合せを考えます。基本的には穴基準で組合せを考えることが多いです。
はめあい公差の組合せには大きく3つの分類があります。
1.すき間ばめ
2.中間ばめ
3.しまりばめ
順にみていきます。
1.すき間ばめ
必ずすき間ができる組み合わせです。基本的に手作業で組立できる、します。
ストッパの回転軸軸受けや、リンク機構の連結部、その他もろもろ、私が最もよく使用する組合せです。すき間ばめのなかでもいくつか組合せがあります。
・H7とe7
多少のガタがあってもよい構造か、穴側と軸側を摺動(しゅうどう)させたい場合に使います。
・H7とf7
若干のガタがあってもよい構造か、穴側と軸側を摺動させたい場合に使います。
・H7とg6
回転軸、精密な位置決め、ほとんどガタのない摺動をさせたい場合に使います。
私が最もよく使うのはH7とg6の組合せです。
IT基本公差は7を選ぶことが多いですが、はめあい長さが長くなる場合は8以上を選びます。はめあい長さが長くなると組立て難くなるためです。はめあい長さが径の倍以上になるようであれば8,9,10を選んでいます。
が、基本的にははめあい長さが長くならないように設計します。
2.中間ばめ
±の組合せ。組合せによってはすき間ができたり、食い込みが発生したりします。食い込みとは穴よりも軸の方が太いことを言います。
・H7とh6
潤滑剤を使えば手で動かせることができる、精密な摺動部に使います。
・H7とjs6
使用中、互いに動かないようにする高精度な位置決め。木ハンマで組立、分解ができる程度になります。
・H7とm6
組立、分解に鉄ハンマやハンドプレスが必要になります。少しの隙間も許さない高精度な位置決めに使います。
ここまでの組合せでは、はめあいの結合力だけでは力を伝達することができません。
部品を損傷せずに分解、組立ができます。
3.しまりばめ
必ず食い込みが発生します。いわゆる圧入、焼きばめ、冷やしばめといわれる組立になります。
・H7とp6
組立、分解に相当な力を必要とします。大トルクの伝達にはキーなどが必要になります。
・H7とs6、t6、u6・・・
相互にしっかりと固定する組合せです。組立には焼きばめ、冷やしばめなどを必要として組付けた後は分解不可です。はめあいの結合力で相当大きな力を伝達することができます
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