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普通公差はまず4つの数字を覚えましょう。

◆3,5,8,12普通公差中級

図1
図1

図1に記された寸法で公差のあるものはどれでしょうか?

ちなみにこの軸は旋盤で加工することを想定しているので基準を右にとっています。旋盤はワーク、加工の対象を左側にチャック、爪で固定して、右側からバイト、刃物を当てて削るからです。


正解は

(79)を除いた全てです。(79)は「6」「20±0.1」「105」の3つの寸法から自動的に算出される寸法になります。これを普通に表記してしまうことを二重寸法といい、ご法度です。理由は後述します。()付きで表す必要があります。

 

図には公差という視点から見ると3つの種類があります。

1.「20±0.1」 ➡ 公差が±0.1と指示してあるタイプ

2.「φ10h7」 ➡ よくわからないアルファベットと数字の組合せ

3.「105」「φ12」➡ 何も指示していないタイプ

 

順にみていきます。

 

1.「20±0.1」 ➡ 公差が±0.1と指示してあるタイプ

これはそのままです。基準の寸法は20だけど±0.1までは許容しますよ、つまり19.9~20.1までであれば合格ですよという意味です。

加工屋さんは指定した寸法を狙って加工してくれますが、あまりに厳しい公差は加工が難しくなってきます。加工だけではなく、寸法測定も難しくなってきます。では厳しい公差とはいくつのことを言うのか?細かい話は3.何も指示していないタイプで説明しますが、普通公差 精級よりも厳しい公差のことです。精級よりも厳しい公差を初めて指定するときは加工屋さんに相談するのが何より確実です。加工できない形状図面とともに無駄に厳しい公差は3年目くらいの頃に私がよくやっていた失敗です。

 

図2
図2

1000㎜全長に渡って200±0.1という精度は本当に必要?

図3
図3

200±0.1必要なところって一部であって他は別にいんじゃね?再考してみましょう。

2.「Φ10h7」 ➡ よくわからないアルファベットと数字の組合せ

はめあい公差、IT公差と呼ばれるものです。

軸と軸をはめこむ穴の精度指示で使用されます。軸側の公差を小文字、穴側の公差を大文字で表します。

軸 Φ10h7

穴 Φ10G6

アルファベットの組合せで軸と穴に必ずクリアランスが発生するようにして手作業で組立てられるようにしたり、若干軸を太くしてハンマーなどを使って組み立てるようにしたり、軸をしっかり太くして圧入や、加熱してでないと組立できないようにしたりを指示します。はめあい公差の詳細は別途開設予定です。

 

3.「105」「Φ12」➡ 何も指示していないタイプ

何も指示をせずにΦ12と書けばΦ12ピッタリで出来るわけではありません。必ず多少の誤差が発生します。公差を指示しない場合、普通公差が適用されます。普通公差には長さや角度、直角度などいくつかの基準があって例えば面取り部分を除く長さ寸法に対する許容差はJISB0405に精級、中級、粗級、極粗級が規定されています。

マシニングで加工すれば精級くらいは出ますが、私が設計するときは特に規定しない限り、基本的に中級で考えます。なお切削以外の加工、例えばプレスはJISB0408、鋳物はJISB0403に規定されています。

 

さてここで、普通公差の中級の覚え方。

普通公差中級

30~120の公差は±0.3

120~400の公差は±0.5

400~1000の公差は±0.8

1000~2000の公差は±1.2

 

図3のように自分の左手を見てください。親指が3mm、人差し指が120mmその間が3(0.3)です。人差し指120mmと中指400との間が5(0.5)です。

という具合にまずは指と指の間の数字3,5,8,12を覚えます。

 

図3
図3

ちなみに3,5,8,12という数字はアンウィンの安全率、軟鋼の値です。私は絶対使いませんが。(私がアンウィンの安全率を使用しない理由はこちらをご覧ください➡普通ボルトの強度から安全率の話

指先の数字30、120、400、1000、2000は「さあ(3)、イッツ(12)、ショー(40)タイム、100、200」と覚えます。3,5,8,12をはみ出る部分(左手親指と小指の外側)は2と覚えておけば大抵の寸法値の普通公差中級の値をソラで言えるようになります。

さあ、イッツ、ショータイム。100、200です。

 

◆終わりに

最初の図に戻って二重寸法について考えます。105±0.3、6±0.1、20±0.1、この三つの寸法を普通公差中級の範囲で加工すると、79には累積誤差で±0.5が発生します。このため79はいわゆるカッコ寸法(79)と表記します。寸法そのものを表記しなくても間違いではありません。この(79)をカッコ寸法とせずに79と表記した場合は二重寸法。ご法度です。79は79±0.3を意味します。このとき、どこを基準にどの寸法を公差範囲内に収まるように加工すればよいのかがわかりません。よって79が重要な寸法で必要な場合、外形の105をカッコ寸法にするか、20あるいは6をカッコ寸法にする必要があります。

 

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