◆リスクの低減~3ステップメソッド~
1.はじめに
[ステップ1]本質安全設計
[ステップ2]工学的処置
[ステップ3]使用上の情報
3ステップ1,2,3はそれぞれ
ステップ1本質安全設計は危害の発生確率と危害の程度の両方を低減するアプローチになります。
ステップ2工学的処置は発生確率を低減するアプローチになります。
ステップ3使用上の情報は発生確率を低減するアプローチになります。
ステップ1本質安全設計はさらに4つに分かれます。
1.危険源の除去
2.フール・プルーフ
3.フェイル・セーフ
4.冗長性
今回は2~4のお話しです。
2.フール・プルーフ
・フール(fool) ばか者
・プルーフ(proof) 防ぐ、よける
・フールプルーフ=ばかな行為を防ぐ。
*フールプルーフそのものの直訳は「簡単」です。
ポカヨケとも言われます。使用者が誤った使い方をできないようにすることです。身の回りの家電にもよくみられる設計思想です。
例えば、電子レンジはフタを閉めないと動きません。洗濯機は洗濯中にふたが開けられないようになっています。オートマ車はブレーキを踏みながらでないとパーキングを解除できません。
フール・プルーフのポイントは操作する人の納得感です。「なぜこの機械はボタンを2つ同時押ししないと動かないのだろう?面倒くさいな。」⇒やってみる「なるほど!両手で押さないと片手が挟まれる可能性があるんだね」
安全のためとはいえあまりに複雑な手続きが必要なものはユーザーから受け入れられません。なるべくシンプルにかつ操作する人が納得するモノでなければ使ってもらえないと言う事です。
3.フェイル・セーフ
・フェイル(fail) 失敗
・セーフ(safe) 安全
・フェイル・セーフ 失敗しても安全。⇒異常時に安全に停止させる。
稼働中に部品が壊れる、操作者が操作を誤る、予想以上の負荷がかかったなど通常とは違う状態、異常時に安全に機械を停止させることです。
例えば電子レンジは稼働中にフタを開けると停止します。最近のストーブは転倒すると停止します。踏切の遮断機は停電になると降りた状態になります。停電になったら降りるの当たり前やん?と思われるかもしれません。設計次第では停電時にその位置で停止させたり逆に上げることも可能ですが、それでは危険なので降りた状態で停止させるように設計します。
フェイル・セーフのポイントは「安全側に停止させる」ことです。
製造現場でよく使われるフール・プルーフとフェイル・セーフの例
①ドアスイッチ
ドアの開閉を検知する。
ドアが開いていると機械が起動しない(フール・プルーフ)、稼働中にドアが開くと機械を停止させる(フェイル・セーフ)、などの安全用途で使用される。
ぶっちゃけマグネット式は金尺があれば、機械式はテープがあれば簡単に無効化できてしまうためドアスイッチ単体では安全対策としては不十分とされる工場もある。
②ライトカーテン
カーテンというよりブラインドのようなイメージでレーザー光を投光受光し、一部が遮られたらオフになる。
機械の露出部をライトカーテンで覆って、遮光された状態では機械が起動しない(フール・プルーフ)、稼働中に遮光されたら機械を停止させる(フェール・セーフ)、安全用途で使用される。
ぶっちゃけ人が侵入して遮光したときに、例えば旋盤のような加工機は回転信号をオフにしても慣性で回り続けるように、機械が完全に停止するまでのタイムラグがあったり、原点復帰など停止のための動作をする場合がある。
このためライトカーテン単体では安全対策とみなされない工場もある。
③エリアセンサ
遮光したものの幅を検知するセンサ。
安全対策としては使ってはいけない。
なぜなら、遮光したからと言って必ずオフになるわけではないため。手を入れてもオフにならず装置が動き続ける可能性がある。
④電磁ロック(セーフティドアスイッチ)
通電したらロックがかかる。
機械運転中の信号でロックをかける=運転中は扉にロックがかかる(フール・プルーフ)ため安全性が高いように思われる。
が、ぶっちゃけキーを差しっぱなしにしてしまえば無効化できてしまう。
この中で安全対策としての優劣をつけるとすれば、
④電磁ロック 70点(佳作)
①ドアスイッチ 60点(及第点)
②ライトカーテン50点(単体では安全対策にならない場合がある。)
③エリアセンサ 0点(安全対策では使わない)
どれもその気になれば無効化できるので、これさえやれば安全100点というものはありません。
4.冗長性
・冗長 必要以上に物事が多いこと、無駄なことや話が長いこと。
機能としては1つあれば充分でも、異常時に「停止しては危険なもの、困るもの」の予備を設けておくことです。
病院やホテルに設けられた予備電源や、一瞬でも停電などで停止しては困る医療機器に設けられた無停電電源装置(UPS)など。通常の電源とは別に異常時に備えるケースがあります。
冗長性の考え方はシステムを2重化、3重化させることで「機械を止めない」ことにあります。その上位概念としてフォールト・トレランスがあります。
番外.フォールト・トレランス
・フォールト(fault) 障害
・トレランス(tolerance) 耐性
・フォールト・トレランス⇒障害の耐性
何らかの異常が発生した(障害)としても、最低限の機能を保つ(耐性)ことです。
停電という障害が発生しても、一時的に電力供給を行う予備電源など2重3重の予備を設ける冗長化が最たる例です。
一方で部品が壊れてもその部品が最低限の機能を持ち続ける例として、パンクしても時速80kmで距離80kmまでの走行が可能なランフロットタイヤ、2基あるエンジンの片一方が停止しても飛び続けられる飛行機、飛行機の両方のエンジンが停止しても滑空を続けられる翼などがあります。
フォールト・トレランスとフェイル・セーフは相対する性質を持っています。
異常時に動き続ける。⇔ 異常時に安全に停止させる。
動き続けるのか?停止させるのか?停止させる場合はその停止のさせ方は?
空圧機器を思い通りに停止させるためにはこちらをご参照ください。
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