◆リスクの低減~3ステップメソッド~
設計者はリスクアセスメントのプロセスの中でリスクの低減措置を行います。リスクの低減措置はISO12100あるいはJIS B 9700に出てくる3ステップメソッドに倣って行います。
[リスク = 危害の発生確率 × 危害の程度]
[ステップ1]本質安全設計
1.危険源の除去
2.フール・プルーフ
3.フェイル・セーフ
4.冗長性
簡単に言うと、1.危ないものを無くす2.危ないことができないようにする3.異常時は安全に停止させる4.異常が起きても予備がある。
実は冗長性の上位概念にフォールトトレランス、異常があっても機能が働き続けるというものがあります。
[ステップ2]工学的処置
①安全防護によるリスクの低減、付加保護方策の実施。
*要するにカバーを付けることです。
[ステップ3]使用上の情報
①マニュアルやエラー/アラーム表示による注意喚起
・クレームの時に、「ここに書いてありますよ!」といえるように準備するという事です。
ステップ1~3の狙い
ステップ1本質安全設計は危害の発生確率と危害の程度の両方を低減するアプローチになります。
ステップ2工学的処置は発生確率を低減するアプローチになります。
ステップ3使用上の情報は発生確率を低減するアプローチになります。
ステップ1の本質安全設計について詳しく見ていきます。
◆本質安全設計
本質安全設計とは「危険源を無くす、あるいは危険源によるリスクを低減すること」です。
危険源を除去できれば最も手っ取り早いのですが、多くの場合はそうはいきません。実際の設計場面においてはリスクを低減することが現実的です。
そのための設計思想にフール・プルーフ、フェイル・セーフ、冗長性の3つがあります。
1.危険源の除去
例えば扇風機を考えてみます。手指が巻き込まれると危険なためモーターを除去する。これは不可能です。製品として成り立ちません。
一方で羽形状や電気効率を最適化することでモーター定格容量を小さくすることはできるかもしれません。定格容量が小さい➡力が弱い➡被災時の影響を最小限にとどめることができます。
また安くてきれいに仕上がるからと、塗料に有害な物質が含まれていたらどうでしょうか?これは違う物質に変更すべきです。危険を除去する前にそもそも危険な物を使わないことも大切なことです。
物質の使用に関する規制には代表的なモノにRoHS指令とReach規則があります。
[RoHS指令](ろーずしれい)
電気電子機器を構成する材料中に含まれる6物質を規定以上の濃度で含有することを禁止しています。
RoHS指令ができた当初は6物質でしたが、のちに4物質加えられて10物質となりました。これをRoHS10(ろーずてん)あるいはRoHS2(ろーずつー)と呼びます。もともとはEU発ですが、EU圏内以外でも適用が広がっています。
[Reach規則](りーちきせい)
対象物質の含有量の情報管理(登録/届出)が必要になります。リスク管理視点の法令であり、含有を禁止するものではありません。
EU圏内で年間1トン以上の化学物質そのものを販売する場合、応手化学品庁に登録する必要があります。化学物質そのものではなく製品であっても意図的な放出がある場合は登録する必要があります。また、高懸念物質(SVHC)と呼ばれる物質は届出が必要になります。SVHCは2007年の実施当初は15物質でしたが、2020年4月現在で200物質超と急拡大しています。
本質安全設計のためにはまず、危険なものを使わないように配慮することが大切です。
ところで扇風機のモーターに関して除去することはできませんが、手指が巻き込まれないようにする方法についてであればいくつか考えることができます。
1.回転部をカバーで覆う。
2.回転部を露出させない。
カバーで覆うのは「工学的処置」になります。多くの方がイメージする伝統的な扇風機が該当します。
回転部を露出させないのは、回転部を触るという危険な行為ができなくするという意味で、フール・プルーフになります。
代表的な製品として羽のない扇風機でおなじみダイソン社のモノがありますが、日本メーカーもSHARPがスリムイオンファン、パンソニックがサーキュレーター創風機という製品を出しています。
次のブログでフール・プルーフとフェイルセーフ、冗長性について解説します。
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