本記事の内容
・はじめに 自動化設備開発の目的
・何をすれば現場の自動化が達成できるのか?
・自動化設備開発で得られる3つのメリット
・自動化設備開発で得られる2つの波及効果
◆はじめに 自動化設備開発の目的
いまさら改めて言うまでもないことですが、製造現場の自動化設備をどんどん進めないとヤバいです。日本では人手不足の解消は見込めないですし、中国も5年前には15歳~65歳の生産年齢人口が減少し始めています。では次はどこでしょうか。インド?東南アジア?アフリカ?世界を渡り歩くのもいいですが、自動化設備してしまえばどこでも好きな場所で生産活動が行えます。
「人や国・地域に依存しない生産体制を築くこと。」
これが自動化設備開発の最大の目的です。
◆何をすれば現場の自動化を達成できるのか?
1.現場の自動化レベルを測る。(現状把握)
2.到達レベルを決める。(目標設定)
3.必要な技術を習得する。(課題の設定と克服)
4.実践する。
5.失敗する。
6.改善する。
7.再挑戦する。
この中で最も大事なのは現状把握です。自分たちが今どういう状態なのかを把握しておかないとその後の行動が全て無駄になります。自動化レベルの定義と各レベル達成に必要な技術はこちらの記事を参考ください。
◆自動化設備開発で得られる3つのメリット
いわゆるQCDです。自動化設備開発に当たってはこの3つを確認して取り組むべきか見送るべきかを判断します。メリットが無ければやる意味はありません。
1.Q(Quality):品質が安定して不良が減る。
人の行動には得意不得意、慣れ不慣れ、あるいは誤った判断、認識、出来ない、違反など様々なバラつき要素があります。人の行動詳細については別途アップ予定です。
機械にもバラつきがあります。例えばロボット。精密なイメージがありますが、10μm程度~100μm程度の停止精度誤差が生じます。毎回同じ位置で止まるんだけど10~100μm程度はずれるということです。例えばエアシリンダーでの推力。エアシリンダー駆動用の空気圧にバラつきがあれば推力もバラつきます。
だけど機械のバラつきは予測制御が可能です。「ロボットの停止精度がわかっているのだからそれに合わせて製品設計と周辺設備の設計を行えばよい。」(参考ブログ:位置決めその1)「空気圧のバラつきはコンプレッサーからの供給に対し設備側の需要が上回った時に生じるため、設備側の空圧機器が消費する空気の量を計算して不足するようであれば増設すればよい。」(参考ブログ:電磁弁とエアシリンダー①シリンダー)という具合です。
機械の場合はバラつきの範囲が予測可能なのでしっかりと構想を練れば品質が安定します。ただし構想があやふやでは思ったような品質が出ません。要するに「失敗ばかりで使えない設備、不良品ばかりを作る設備」ができてしまいます。
どのように構想を練ればよいかは、日刊工業新聞社「機械設計」で連載中の「失敗しない!自動化設備開発 虎の巻」5月号、6月号で「ゼロディフェクトを実現するための構想設計」を解説しています。
メリット1 しっかりと構想を練った自動化設備であれば不良品が無くなる。
2.C(Cost):コストを削減できる。
設備のコストは減価償却費で確認します。減価償却というのは長期にわたって使用する固定資産(=ここでは生産設備)について、購入した年で経費計上するのではなく、使用する期間にわたって形状する会計処理のことです。
例えば2020年に1,080万円の設備を購入したとすると、2020年に1,080万円全てを経費計上するのではなく、その使用期間にわたって分割して計上します。
1,080万円の設備を9年で償却するのであれば年間コストは1,080(万円)÷9(年)=120(万円)になります。
ここで9年というのは国税庁により定められている「生産用機械器具、金属加工機械製造設備」の耐用年数になります。資産の種類ごとに異なる年数が設けられています。
実際には耐用年数ではなく「その設備を使用する期間」で評価することが重要です。例えば3年間で製品設計が変わって設備も変わるのであれば、償却期間は3年間で計算します。
この場合、上記の例は年間コスト1,080万円÷3(年)=360(万円)ということになります。
この設備で年間10万個生産するのであれば、1個あたりにかかるコストは360(万円)÷10(万個)=36(円/個)という事になります。
作業者一人の年間コストが300万円とすると1個当たりにかかるコストは300(万円)÷10(万個)=30(円/個)という事になります。
設備は完全無人では動きません。保全などで0.5人(半日手がかかる)とすると36円+30円×0.5人工=51円が設備コストです。
人手でやった場合、2人工以上かかるとすれば、30円×2人工(以上)=60円(以上)となり設備導入の方がコストが低くなります。
メリット2 償却費をしっかりと評価することでコストが下がる。
3.D(Delively):生産能力がアップする。
24時間365日の無人運転は不可能ですが、8時間、12時間、など一定の時間での無人運転は可能です。ただし「ゼロディフェクトを実現するための構想設計」がしっかりと練られていることが前提です。
休憩時間、夜間などの生産活動が可能になり、稼働時間を延ばすことができるため日当たり生産量がアップします。(参考ブログ:稼働率と可動率 決定版! 概要)
メリット3 無人で稼働でコストをかけずに生産量がアップする。
◆自動化設備開発で得られる2つの波及効果
SとEです。
1.S(Safty):作業を機械に置き換えるので、現場における災害リスクが下がります。
2.E(Environment):品質が安定することで不良品が減り、不良廃棄が減ります。
◆終わりに
最後にもう一度、7つのステップを確認しておきます。
1.現場の自動化レベルを測る。(現状把握)
2.到達レベルを決める。(目標設定)
3.必要な技術を習得する。(課題の設定と克服)
4.実践する。
5.失敗する。
6.改善する。
7.再挑戦する。
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