◆フィードバック制御の基本、ON・OFF制御
◆ON・OFF制御でも精度よく制御を行う方法はある!
せっかくアナログデータをA/D変換機でデジタル値に変換するのであれば、データとして確認するだけではなく、機械のフィードバック制御に使いたいですよね。
フィードバック制御と言えばPID制御が有名ですがその前に基本のON・OFFを押さえましょう。
最も簡単な制御は図1のグラフに示すように閾値を設けて閾値を外れたらON・OFFさせることです。これをON・OFF制御と言います。
基本のON・OFF制御でもやり方によっては精度よく制御が行うことができます。
さてここで、図2のようなヒーターでチャンバーを200度まで加熱する装置を考えます。
上限閾値を210℃、下限閾値を190℃とします。
210℃に到達するまではヒーターが入ったままで、210℃を超えるとヒーターが切れます。ヒーターを切ってすぐはまだ余熱を持っているため、温度が210℃を超えます。
これをオーバーシュートと言います。
ヒーターを切ってしばらくすると温度が低下していきます。そのまま時間が経つと今度は下限閾値の190℃を下回ります。この時再びヒーターを入れます。ヒーターが190℃に温まるまで少し時間がかかるため、それまで温度は190℃を下回って下がり続けます。これをアンダーシュートと言います。
後はこれの繰り返しです。
図3のように上限下限の幅が小さくなると、ON・OFFが短いサイクルで繰り返されることになり、ヒーターの寿命が短くなってしまいます。
さらに外気温との差が大きいと温度が上がる速度は遅く、温度が下がる速度は速くなります。
図4に示すようにこのとき、ヒーターの出力を大きくすれば温度が上がる速度(昇温速度)を速くできます。逆に出力を小さくすればさらに遅くすることができます。つまり昇温速度はヒーター出力の大きさ、要するにワット数、を変えるこで制御できます。
*ただしワット数を変えるためには高速でON・OFFを切替を繰り返す必要があります。この切り替えをどれくらいの頻度で行えばいいのか?を目標からの差や上昇・下降カーブを自動で見極めて実行する技術がPID制御です。ここでは単純に出力の大きな(小さな)ヒーターに交換することをイメージしてください。
一方で温度が下がる速度(降温速度)は外気温との温度差に依存するため制御できません。
降温速度があまりに早いとアンダーシュートが大きく、ON・OFFサイクルも早くなってしまいます。さらに温度の平均値が設定値に比べて低くなってしまいます。
PID制御を使えばあっという間にオーバーシュート、アンダーシュート、サイクルおよび平均値のズレが改善できますが、その前にON・OFF制御でこれらの問題を解決する方法についてみていきます。
◆二重化でON・OFF制御を改善しよう。
降温速度を遅くするために図5のようにヒーターの外側にもう一つ、予熱ヒーターを設けてみましょう。
予熱ヒーターで150℃程度になるよう常に加熱させて、目標の200度までの差、50℃をメインヒーターで昇温します。こうすることでメインヒーターと予熱ヒーターとの温度差は50℃になり、図6に示すように降温速度を遅くすることができます。
その結果、メリットデメリットをまとめます。
メリット
・メインヒーターの出力を押さえることができる。
=昇温が緩やかになる。
・外気温との差が小さくなる。(50℃)
=降温が緩やかになる。
デメリット
・ヒーター2台となるため高コスト。
・スペースが大きくなる。
・保全要因が増える。
・消費電力が増える。
デメリットを避けて、多少精度が落ちてもON・OFFでやりたい場合、断熱材を巻いて保温をしましょう。
長くなってしまいましたのでPID制御については次回とします。
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